風岡公災訴訟

風岡公災訴訟とは
 2009年9月29日、愛知県立岡崎商業高等学校で校内のコンピュータ関係等を中心に仕事をし、科主任でもあった風岡先生が、深夜、校内で意識不明の状態で倒れているところを巡回中の警備員によって発見され、直ちに救急者で搬送。集中治療室に緊急入院しましたが、一度も意識が戻ることなく、5日後の10月4日にくも膜下出血で帰らぬ人となりました。翌年1月、地方公務員災害補償基金愛知県支部に対して公務災害認定を請求したが「公務外」として認定せず、支部審査会・本部審査会に不服審査請求をしたがいずれも棄却された。2014年2月、「公務外災害認定処分取り消し」を求め名古屋地裁に提訴。2018年1月の名古屋高裁で勝利の判決が下されるまで名古屋地裁で口頭弁論を17回、名古屋高裁で3回、計20回行われた。

教員が多忙であることの論証の難しさ
 私が岡商で務めた8年間のうち4年間は教務部に所属しておりました。あらゆる分掌の中で最も多忙を極める分掌で、誰も希望者がなく、毎年、新任・新転任が配属されます。私も例外にもれず、何の打診もなく割り当てられました。こんな学校だから、きっとこの学校は何か問題を起こすだろうなと予想していましたが、案の定、転勤してから2年後にこの事件が起きたわけです。風岡先生と私は入れ替わりです。風岡先生との接点は、私が転勤後、卒業生の思い出ビデオを送ってもらおうと電話でお話したことが1回あるだけです。しかし、とうとうビデオは送られてこなかったことから推察すると、当時の風岡先生の多忙さが窺われます。

的外れな勤務管理
 この事件が起きてから、教職員の勤務時間を把握するために「在校時間記録簿」の記入が義務づけられました。毎回パソコンを立ち上げて、毎日の勤務開始時刻と終了時刻を入力します。教師の周辺業務がまた増えたみたいで、私は1週間まとめてやっていました。これを各月の終了後まとめて管理職に提出します。そして、月に80時間超過勤務実態があると校長面接をするという仕組みになっています。実際に80時間を超える人は特定の人に限られます。私は面接をしても無意味であるとわかってましたから、時間が超過しないように入力していました。そもそも、仕事の本質(内容/中身)を考えない限り、教員の多忙さは解決されないのではないでしょうか。校長から見ると、定期考査期間中は教員が毎回年休をとっているから、今まで5日間でやっていたものを1日減らして4日間でできるだろうという認識しかないわけです。ところが、教師は日々職場を離れることは難しいので、この期間中に銀行に行ったり郵便局に行くなど私的な用事を済ませることが多いのです。生徒も1日3科目のテストはかなり大変です。要は、現場性への認識が足りないということです。

36(さぶろく)協定って意味あるの?
 毎年、年度初めに職員と管理職の間で交わされるのが36協定である。36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定で、企業が法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働(残業)を命じる場合に必要となります。ところが学校現場では、特別条項を考慮に入れたとしても主任や部活動主顧問ならば容易にその上限を超えているのがふつうである。私が生徒会主任をやっていた時でも、土日返上で生徒会室にこもって学校行事や授業の準備に追われていたのを覚えています。そもそも36協定で「時間外労働を認めますよ」という前提を作ること自体おかしいのではないのか?それならば、このようなまやかしの協定には「NO」を突き付け、「我々が時間外労働をしているのは教師としての業務の性質上必要としているからやっているのであり、時間外労働を認めているわけではありませんよ」という形にすべきであると思うのです。

タイムカード導入の是非
 1年を通じて教師の仕事を見ると、仕事が集中しているのは年度替わりの3月/4月、成績処理を行う7月/12月/2月であろう。教師の仕事はある時期にドッと集中するのが特徴です。仕事が早く終わり帰宅したい場合は年休や振替をとったりしています。校内のポジションによってもかなり開きがあります。私が生徒会の主任をやっていたころは土日出勤が当たり前で、管理職からは「学校の住人」と言われてました。事件後、組合や弁護士から「教職員の労働現場にもタイムカードを導入し、学校が労働時間を把握することの重要性」を訴えていますが、私が教員になった当初は、学校と組合の協定で、生徒が下校した1時間後は帰宅してもいいことになっていました。今からして思えばいい時代だったと思いますが、それでも、教師の仕事の性質から考えるとこれが一番合理的だと思います。世間からのバッシングやら一市民からのやっかみなどで、今ではサラリーマンと同じで勤務時間がありますが・・・。タイムカードの導入も、工場現場の労働者や民間企業や役所のサラリーマンみたいで、不定型労働を強いられる教師にとっては何となく違和感を感じますね。仕事がなくても5:00までは学校のどこかにいなければいけません。私は「朝型」ですから朝早く出勤して夕方は早く帰宅したいわけです。もしタイムカード導入ならば、一部役所がやっているような「フレックスタイム制」を導入してもらいたいものです。「30分早く出勤したなら30分早く帰宅できる」というようにね。時間管理にシビアであるならば、こうしたシフト出勤も認めないとフェアじゃありませんよ。